今回取り上げるのは三菱ケミカル ヴァンキッシュVV。こちらを購入し、さっそく試打計測を行ったのでレビューします。
計測にはトラックマン4を使用(今まではGCクアッド使っていましたが、アプリなどソフトウェアの使いやすさから変更しました)

結論から言うと、VANQUISH VVは、軽量シャフトでヘッドスピードを底上げしながら、方向性や安定性もしっかり確保できる完成度の高いモデルでした。
単に軽いだけでなく、スイング中のタメとしなり戻りがスムーズで自然とヘッドが走る設計になっており、スピードを無理なく引き出してくれます。
そのうえで先端が暴れず、左右のブレも少ないため、「飛ぶけど曲がる」ではなく「振って飛ばせて狙える」という感覚がはっきりと伝わってきます。
軽量シャフトにありがちな頼りなさや吹け上がりすぎといった不安要素もなく、しっかり押し込める手応えと直進性の高さは、競技志向のプレーヤーにも安心してすすめられるレベル。
さらに、これだけの性能と精密な設計を持ちながら、価格は他のプレミアム軽量モデルと比べて控えめで、コストパフォーマンスにも非常に優れています。
「軽くしてスピードを出したい。でも飛距離や安定感は絶対に妥協したくない」そんなゴルファーにとって、VANQUISH VVはかなり理想に近づいた軽量シャフトといえるでしょう。
目次
三菱ケミカル ヴァンキッシュVVの概要とデザイン

2025年7月に発売となる『ヴァンキッシュVV(VANQUISH VV)』は、三菱ケミカルが誇る超精密軽量シャフト「ヴァンキッシュ」シリーズの最新作。2022年に登場した初代モデルが“軽量でも叩ける”という新基準を提示したのに対し、本作VVではスイング中の一体感と方向安定性をさらに磨き上げた内容へと進化したのがポイントです。

大きな違いは、シャフトの調子設計が「先中調子」から「中調子」へと変更された点。これにより、切り返しからインパクトまでのしなり戻りがより素直になり、タイミングの取りやすさと操作性が大きく向上しています。特に、先端の暴れを抑えたいプレーヤーや、左へのミスを抑えたい中上級者にとって、より安心して振っていける挙動に仕上がっているとのこと。

素材構成や製造技術は、初代ヴァンキッシュから高い完成度で継承されているとされています。全長にわたって使用された高弾性40t〜46tカーボンファイバーや、低レジン含有のX Link Tech™レジンにより、軽量ながらも高剛性かつ高反発。
さらに、手元部にはアモルファスワイヤー(金属繊維)を内蔵し、しなり戻りの速度とエネルギー効率を高めています。製造工程では、重量±1g/振動数±1cpmという超精密な公差管理「Precision Crafted」も引き続き採用されており、複数本組んでもフィーリングの差が出にくいのも大きな特徴です。

デザイン面では、グリーン系ホログラムロゴをあしらったマットブラック仕上げを採用。角度によって光彩が変化する高級感のあるホログラフィック転写と、レーシーかつ洗練された印象のグラフィックが、機能美と所有欲を同時に満たしてくれます。
三菱ケミカル ヴァンキッシュVVの試打計測データ



試打計測の平均データが下記
2024年以降はドライバーはヘッドスピード44m/s〜46m/sの範囲内での計測に統一しています(1m/sぐらいは前後するのはご了承ください)。
計測項目 | 平均値 |
---|---|
クラブスピード | 44.6 m/s |
ボールスピード | 66.2 m/s |
スマッシュファクター | 1.48 |
打ち出し角 | 14.3° |
スピン量 | 2,148 rpm |
キャリー | 249.3 yd |
トータル距離 | 276.2 yd |
最高到達点 | 31.0 yd |
着地角 | 36.3° |
スピン軸 | -1.3° |
左右ブレ | 5.5 yd 左 |
曲がり幅(Curve) | 2.1 yd 左 |
打出方向 | -0.8° 左 |
弾性素材と中調子設計が生む“叩ける軽量”の真価が如実に表れた結果。スマッシュ1.48と66m/s超の初速で飛距離性能は申し分なく、スピン軸-1.3°・左右ブレ5.5ydと方向安定性も秀逸。軽量シャフトの中でも、飛距離と安定性を高次元で両立する完成度の高さが際立っている。
飛距離性能と上がりやすさの分析

試打ではヘッドスピード44.6m/sに対し、ボール初速は66.2m/s、スマッシュファクターは1.48と非常に高効率。インパクトでの当たり負けがなく、しっかり芯でエネルギーを伝えられていることが数値にもはっきり表れています。
飛距離面では、キャリー249.3yd・トータル276.2ydという安定した飛びを実現。注目すべきは、スピン量が2,148rpmと最適帯域の下限に収まっている点です。軽量シャフトにありがちな吹け上がりやスピン過多とは無縁で、打ち出し角14.3°・最高到達点31.0ydというバランスの取れた中高弾道を描いてくれます。

最高到達点31ydは、「まずまず高弾道」に分類され、軽量シャフトとしては非常に理想的な高さ。キャリーも稼げて風にも強くバランスの良い弾道設計です。
さらに評価すべきは、縦距離のバラつきが極めて少ないこと。試打データではキャリーのブレが±4〜5yd程度に収まっており、ラウンド中の再現性は非常に高いレベルにあります。これは、先端の暴れを抑えた設計や、中間のしなり戻りの正確さが寄与しており、毎ショット同じように飛ばせる安心感が強く感じられました。
「軽いから飛ぶ」のではなく、「無駄なく飛ばせる軽量シャフト」というのがVANQUISH VVの本質かなという印象です。
弾道や球筋、方向性の分析

まず感じたのはとにかく球筋がブレにくいということ。打ち出し方向の平均は-0.8°と目標ラインほぼ真っすぐ。スピン軸は-1.3°と非常に小さく、曲がり幅も平均2.1ydに収まっており、視覚的にはほぼストレートに近いハイドロー系といえる弾道でした。

また、左右ブレは平均5.5yd左。±10yd以内にしっかり収まっており、“フェアウェイ中央からわずかに左”に着弾する安心感のある球筋が出ています。特定の方向へ過剰に出るクセがなく、ニュートラルでコントロールしやすい挙動は、競技ゴルファー等にも好まれるポイントかなと思います。

さらにこのシャフトの特徴として、打ちにいっても曲がらないという安心感があります。通常、軽量シャフトでは振りにいくと先端が暴れて左に引っかかるケースも多いですが、VV ではその不安がほぼ感じられません。先端剛性の高さと中調子の素直な挙動が効いており、スイング軌道なりの球が出てくれる感覚が強く残ります。
「振っても暴れない」「曲げたいときだけ操作できる」そんな扱いやすくて信頼できる方向性の良さが、VANQUISH VVの大きな武器。方向安定性に悩みを抱えるゴルファーにも、安心しておすすめできるモデルです。
三菱ケミカル ヴァンキッシュVVの振動数とフィーリング

今回試打に使用したVANQUISH VV 4Xの実測振動数は266cpm(45インチ換算)。
この数値は、40g台のシャフトとしては明らかに高剛性の部類で、通常であれば50g台〜60g台のXフレックスに匹敵する水準です。軽量帯シャフトにありがちな「柔らかくて頼りない」といったフィーリングとはまったく異なり、しっかり叩ける“軽硬”シャフトとして非常に完成度の高い仕上がりになっています。


中間剛性の実測値は5.39mm(#450mm地点)。この数値も、一般的な40g台と比較すると十分に張りがあり、むしろ硬めに設計されている部類です。ただし、手元~中間の剛性の繋がりが非常に滑らかで、切り返しではスムーズにタメが作れ、ダウンスイングからインパクトにかけて無駄のないしなり戻りがスピードを生む感覚がありました。
実際の試打でも、スマッシュファクターは1.48と非常に高く、ボール初速は66.2m/s。
これは単に振動数が高いだけでなく、中間のしなり戻りと先端の安定性がしっかりとボールにエネルギーを伝えている証拠でもあります。
フィーリング面では、手元側の剛性感と先端側の落ち着きが際立っており、軽量ながら打ち込んでいける安心感があります。振り遅れや過剰なつかまりとは無縁で、スイング軌道なりの弾道が出やすく、操作性の高さと直進性のバランスがとても優れていると感じました。
三菱ケミカル ヴァンキッシュVVの良かった所・微妙な所
性能評価チャート
キャリー249.3yd・トータル276.2ydと優秀な飛距離性能を記録。スマッシュファクターは1.48、初速は66.2m/sと非常に高効率で、しなり戻りのスピードと先端の安定感がしっかり噛み合った理想的なインパクトが実現できています。飛距離性能の評価は高めの9.5点です。
一方、弾道の高さについては、打ち出し角14.3°・最高到達点31ydとしっかり高さは出ているものの、スピン量が2,148rpmと抑えめなため、弾道のイメージは“上がる”というより“強く前に伸びる”。高く上げたいタイプのゴルファーには少し物足りなさもあるため、上がりやすさは7.0点に設定しています。
つかまりの評価は7.5点。スピン軸−1.3°、曲がり幅2.1ydと軽いドロー傾向はあるものの、先端が走りすぎる挙動ではなく、あくまでスイングなりのニュートラルなつかまり方。左を怖がらずに振っていける安心感があります。
寛容性と方向安定性はいずれも高水準で、左右ブレは平均5.5yd、キャリーのばらつきも±5yd前後に収まり、軽量シャフトとは思えないほどの直進性と再現性の高さが際立ちました。操作性については、中調子らしい素直な挙動でコントロールはしやすいですが、球を積極的に曲げたいゴルファーにとってはやや穏やかに感じる可能性もあるため、こちらは7.5点の評価としています。
そして最後にコスパですが、これは本モデルの大きなアドバンテージ。税込49,500円という価格設定は、たしかに軽量プレミアム帯としては高めに感じられるかもしれません。ですが、TRPXなどの国産軽量シャフトと比べると価格は半分以下。それでいて±1cpmの精密製造、全長に高弾性素材を使用し、打ちごたえ・安定性・飛距離のすべてを高いレベルで両立していることを考えると、性能対価格のバランスは非常に優秀。シャフトにこだわるにとっても、納得感のある価格帯と言えるでしょう。この点を踏まえ、コスパの評価は9.5点としました。
総じて、VANQUISH VVは「軽くても頼りないシャフトではない」「本気で振って結果が出せる軽量X」というジャンルを確立した、非常に完成度の高い1本です。
まとめ

VANQUISH VVは、これまでの軽量シャフトにありがちだった「頼りなさ」や「吹け上がりすぎ」といった不安要素を見事に払拭し、“軽くて、叩けて、曲がらない”という新たな選択肢を提示してくれました。
先端が暴れにくい中調子設計のおかげで、振りにいっても弾道が安定しやすく、プレッシャーのかかる場面でも安心して振っていける安心感があります。
特に印象的だったのは、40g台という軽さの中に、しっかりとした芯のあるフィーリングが共存していること。軽量化による振り抜きの良さと、シャフト全体の剛性バランスが高次元で融合しており、ヘッドスピードが速いゴルファーでも安心して使える軽硬モデルに仕上がっています。
まあさすがに40g台は軽すぎ!と思う人は50g台も選択肢にはあるので、クラブセッティングのバランスを見ながら選んでみてもいいと思います。
価格帯も49,500円とプレミアムクラスですが、TRPXなどの競合軽量シャフトと比べればコストパフォーマンスは非常に高く、比較的手を出しやすい方だと思うので、軽量化して飛距離を伸ばしていきたいという方はチェックしておくべき1本です。
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