今回取り上げるのはSPEEDER NX HB。こちらを購入し、さっそく試打計測を行ったのでレビューします。
計測にはトラックマン4を使用(今まではGCクアッド使っていましたが、アプリなどソフトウェアの使いやすさから変更しました)

結論から言うと、フジクラ「SPEEDER NX HB」は、高弾道・高スピンでグリーンをしっかり狙える、“止まるハイドロー”が打てるユーティリティ用シャフトです。
人気の「24 VENTUS HB Blue」と比較すると、こちらのNX HBの方がつかまりが明確に良く、ドロー傾向の球が自然に出やすい設計。スピン量も多めなのでドローでも高さとスピンでグリーンを止める球筋を打ちたいゴルファーに特にフィットすると思います。
先端部には高強度カーボン「トレカ® M40X」を採用。当たり負けしない剛性と、VTC構造による滑らかなしなり感が共存し、安定感と高さの両立も実現できていた点も高評価です。
「つかまりすぎないけど左には行かない」と評価されるVENTUS HBに対し、NX HBはつかまり感がしっかりありながら、打ち出しの高さ・止まりやすさで攻めていける設計。ロングアイアンや低スピンすぎるUTで悩んでいる方に、頼れる選択肢となる1本です。
目次
SPEEDER NX HBの概要とデザイン

SPEEDER NX HBの最大の特徴は、「しっかりつかまって、高く上がり、止まる球が打てる」挙動を備えている点にあります。これはシャフトの素材設計と剛性設計の両面から明確に狙われた結果で、非常に理にかなった構造になっています。
まず注目すべきは、先端部に採用された高強度素材「トレカ® M40X」。従来のカーボン素材よりも引張強度・弾性率ともに優れたこの素材を使うことで、シャフト先端のブレを抑え、様々なライから使用するユーティリティでも“当たり負けしない強さ”を実現しています。実際、今回の試打でも芯を外したショットでも球が浮いて前に進む感覚があり、挙動の安定性が強く感じられました。
さらに、可変トルク設計「VTC(Variable Torque Core)」もこのシャフトの核。手元と先端のトルクを適度に締めながら、中間部はややしなやかに仕上げられていて、タイミングの取りやすさと適度な“しなり戻り”を両立しています。中調子ながら、ただの素直な挙動ではなく、芯に厚く当てやすい「しなりポイント」が明確に感じられる設計になっているのが印象的です。

外観的には、シャープなシルバー系で落ち着いた中にもスポーティさを感じさせるコスメ。また重量帯・フレックスともに細かくラインナップされており、今回試打した「75S」はシャフト重量約77g、実測振動数は274cpm。
モデル | フレックス | 長さ(inch) | 重量(g) | トルク(°) | キックポイント |
---|---|---|---|---|---|
NX HB 55 | R | 42.0 | 53.5 | 4.5 | 中調子 |
NX HB 55 | SR | 42.0 | 55.0 | 4.5 | 中調子 |
NX HB 55 | S | 42.0 | 56.5 | 4.5 | 中調子 |
NX HB 65 | R | 42.0 | 63.5 | 3.7 | 中調子 |
NX HB 65 | SR | 42.0 | 65.0 | 3.7 | 中調子 |
NX HB 65 | S | 42.0 | 66.5 | 3.7 | 中調子 |
NX HB 75 | R | 42.0 | 73.0 | 3.4 | 中調子 |
NX HB 75 | SR | 42.0 | 75.0 | 3.4 | 中調子 |
NX HB 75 | S | 42.0 | 77.0 | 3.4 | 中調子 |
NX HB 85 | R | 42.0 | 83.0 | 3.2 | 中調子 |
NX HB 85 | SR | 42.0 | 85.0 | 3.2 | 中調子 |
NX HB 85 | S | 42.0 | 87.0 | 3.2 | 中調子 |
NX HB 95 | SR | 42.0 | 93.0 | 3.0 | 中調子 |
NX HB 95 | S | 42.0 | 95.0 | 3.0 | 中調子 |
NX HB 95 | X | 42.0 | 97.0 | 3.0 | 中調子 |

構えたときの印象も落ち着いたカラーリングなので良い感じです。
SPEEDER NX HBの試打計測データ



試打計測の平均データが下記
2024年以降はドライバーはヘッドスピード44m/s〜46m/sの範囲内での計測に統一しています(1m/sぐらいは前後するのはご了承ください)。
項目 | 数値 |
---|---|
ヘッドスピード | 39.0 m/s |
ボールスピード | 56.8 m/s |
打ち出し角 | 16.8° |
打ち出し方向 | –1.1° |
バックスピン | 4,639 rpm |
スピン軸 | –4.1° |
最高到達点 | 34.4 yd |
キャリー | 189.0 yd |
トータル飛距離 | 200.1 yd |
曲がり幅 | 7.1 yd 左 |
左右ブレ | 10.7 yd 左 |
スマッシュファクター | 1.46 |
トータル200yd、キャリー189ydと、#4ユーティリティとして非常に安定した飛距離が出ていますが、特にすごく飛ぶようになる等はありません。
特筆すべきは打ち出し角16.8°とスピン量約4,600rpm。この組み合わせにより、高く上がってしっかり止まる理想的な弾道が実現されていました。
左右のブレ幅も±10yd前後と、実戦使用に十分な直進性と再現性が確保されています。スピン軸が–4.1°で、ドロー傾向ながら、曲がり幅7yd以内の“比較的落ち着いたドロー”という印象。フェースの戻りが素直で、暴れない安心感もありました。
スマッシュファクター1.46は、ハイブリッドとしては上限に近い数値で、エネルギーロスが少なく、効率よく飛ばせています。
飛距離性能と上がりやすさの分析

正直に言うと、SPEEDER NX HBの飛距離性能は「とにかく飛ぶ」というタイプではありません。キャリー189yd/トータル200ydという数値は、ヘッドスピード39m/s帯の#4ユーティリティとしては平均的な飛距離。強弾道・低スピンで飛ばすタイプのシャフトと比べると、おとなしめの印象です。

ただしこのシャフトの強みは、「高さ」「スピン」「方向安定性」の3点が高いレベルで揃っているところ。
打ち出し角16.8°、スピン量4600rpm超、最高到達点34.4yd、着弾角46.8°という数字からも、高弾道かつ高スピンでピンを狙って止めるショットが打てる設計であることがよくわかります。
ロングアイアンや低スピン系UTではなかなか出せない“止める弾道”を、自然なスイングで再現できるのは強みかなと思います。

方向性も優秀です。打ち出し方向–1.1°、スピン軸–4.1°と軽いドロー傾向ながら、曲がり幅は7.1yd、左右ブレも±10yd以内と安定。適度につかまるのに、左へ巻きすぎない。「つかまりすぎず、狙ったところに返ってくる」安心感がある印象です。
このあたりの特性は、2024年モデルの「24 VENTUS HB Blue」との違いがはっきり出たかなーというところで。
VENTUSの方は中弾道・中スピンで直進性と操作性を重視したシャフトで、フェード・ドローをコントロールしたいより操作性を重視した中上級者に向いた設計。
一方NX HBは、より自然につかまり、高く上がって止まる球が打てるという意味で、狙うターゲットと用途が明確に異なります。

要するに、VENTUS HBは「ラインを出して攻めるタイプ」、NX HBは「高さとスピンで止めて狙うタイプ、あと捕まりも良い」。
グリーンをスピンの入ったハイドローで狙っていきたいなら、NX HBは非常に信頼できるシャフトです。
SPEEDER NX HBの振動数とフィーリング

今回使用したSPEEDER NX HB 75Sの実測振動数は274cpm(40.25インチ)。これに対して、同条件(同一ヘッド)で計測した24VENTUS HB Blue 7Sは276cpm。数値上はVENTUSの方がわずかに高剛性ではありますが、その違いはごくわずか(2cpm差)で、実際の使用感では設計思想の違いの方がはるかに大きく出ます。
NX HBは先端と手元を強めに締め、中間にしなりを持たせた安定系の中調子。一方24 VENTUS HB Blueは、シャフト全体がやや均等にしなり、直進性と操作性を両立した中元調子といった挙動でした。
振動数だけを見れば両者は同じ“しっかり系”に分類されますが、NX HBの方がつかまりやすく、インパクトでヘッドがスムーズに戻ってくるのが大きな違い。特に、ドロー系の弾道を安定して打ちたいプレーヤーには、NX HBのほうが自然にスイングできる印象です。
また、この274cpmという数値は、6番アイアンのMODUS 105 S や DG 120 S200 に近い値でもあり、アイアンとの振動数フローも合わせやすい。そういった意味でも、中級者〜上級者が違和感なく組み込めるスペックに仕上がっていると感じました。
フィーリングと操作性

SPEEDER NX HBを振ったときにまず感じるのは、クセのなさと一体感のあるしなり感。中調子設計らしい素直な挙動ながら、先端と手元の剛性がしっかりしているおかげで、スイング全体に「芯」がある印象です。
とくに好印象だったのが、タイミングの取りやすさ。シャフト全体がムチのようにしなり戻るというよりは、スッと体の正面でフェースが戻ってきてくれる感覚で、ドロー系の持ち球が自然に出やすいフィーリングでした。無理に操作しなくても、しっかりとつかまる球が出る安心感があります。
打感はシャープすぎず、手応えのある「押し感」とフェースの安定感が両立している印象。先端の強化素材(M40X)の効果もあって、インパクトでの当たり負けが少なく、多少の打点ブレでもフェース面が暴れずに保たれている感覚がありました。
操作性については、ドロー系の球筋は非常に打ちやすく、軽くつかまえていけるのが強み。一方で、フェードをしっかり打ち分けたいという人には、ややオートマチックすぎると感じるかもしれません。基本的には、「つかまり・高さ・安定感」を重視するプレーヤー向けのフィーリング設計です。
SPEEDER NX HBの良かった所・微妙な所
性能評価チャート
飛距離はキャリー189yd・トータル200ydと、ユーティリティとしては平均的な飛距離。VENTUS HB Blueと比較しても大きな差はなく、打ち出しの高さとスピン量の豊富さを考慮すれば、飛距離性能も十分に評価できます。極端に飛ばすタイプではないものの、バランスの取れた設計であるため、7.5点としています。
上がりやすさは非常に優秀です。打ち出し角は16.8°、最高到達点は34.4ydと、グリーンを狙う弾道として理想的な高さが出ていました。つかまりの良さも特徴のひとつで、自然なフェースターンで軽いドローが打ちやすく、VENTUS HB Blueよりもややつかまりが良い印象です。
方向安定性・寛容性についても高水準です。スピン軸は–4.1°、曲がり幅は7ydと、安定した球筋が出ており、芯を外しても当たり負けしにくい設計が活きています。ただし、操作性についてはフェードを打ち分ける自由度という点でVENTUS HB Blueにやや軍配が上がるため、7.5点としています。
コスパについては非常に高く評価できます。楽天市場ではスリーブ付きでも約16,700円前後で入手でき、VENTUS HB Blueのスリーブ付き相場(2万中盤〜後半)と比較すると、1万円近く価格差があります。この価格帯でこれだけの性能が得られるのは貴重であり、コストパフォーマンスは9.5点と非常に高評価です。
まとめ

SPEEDER NX HBは、高弾道・高スピン・安定した方向性というユーティリティに求められる要素を、非常にバランスよく備えたシャフトです。特に、打ち出しの高さとフェースの戻りやすさによって、自然と「止められるハイドロー」が打てる点が印象的でした。
飛距離性能は平均的ですが、その分スピンがしっかり入ることでキャリーで攻めるショットに強く、ロングアイアンでは届かないピン位置にも自信を持って狙っていけます。加えて、過剰にはつかまりすぎず、大きな左へのミスが出にくい設計も実戦的です。
VENTUS HB Blueと比べると、直進性や操作性ではやや劣る面もありますが、グリーンを「上から狙って止める」弾道を求める方にとっては、むしろNX HBの方が武器になる場面が多いと感じます。
価格面でも非常に手が届きやすく、完成度の高さとコスパの良さを両立している点も魅力です。
おすすめしたいのは、キャリーでピンを狙いたいゴルファー、そして高さやスピン不足に悩む方。つかまりの良さを活かしたハイドローで、グリーンを正確に攻めていきたい方には、間違いなく試す価値のある1本です。
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